『ふがいない僕は空を見た』『晴天の迷いクジラ』『夜に星を放つ』で知られる窪美澄(くぼ・みすみ)は、家族や恋愛、命の誕生と別れ、社会の中で見えにくい孤独を描く小説家です。深刻な出来事に目を向けながら、人が他者と関わり直す小さな希望も描きます。
1965年東京都生まれ。広告制作会社などで働き、フリーの編集ライターを経て、2009年「ミクマリ」でR-18文学賞大賞を受賞。2011年に『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞、2022年には『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞しました。
どの作品にも人生の痛みを見つめる姿勢がありますが、長編と短編、現代の家族と昭和の女性史では読み心地が異なります。学歴と経歴の確認できる範囲から、代表6作品の特徴、おすすめの読む順番、2026年の新刊まで整理します。
- 広告制作会社勤務やフリー編集ライターの仕事を経て、2009年に40代で文学賞を受賞してデビューした
- 家族・性・喪失・社会のつながりを描き、2011年山本周五郎賞、2012年山田風太郎賞、2022年直木賞を受賞
- 『トリニティ』の女性史から『いるいないみらい』の家族の選択、2026年の新作まで幅広く書き続けている
40代での文学賞受賞から直木賞までの道のり。
窪美澄の経歴・学歴|1965年東京生まれ、学校名は公表資料で未確認
窪美澄は1965年、東京都生まれです。新潮社、集英社、文藝春秋の著者紹介に共通して記載されています。作家になる以前の暮らしについては、本人のインタビューと出版社の略歴を照合するのが確実です。
出身大学や高校、卒業年については、確認した公式著者プロフィールに記載されていません。「文学部を卒業した」「特定の学校で学んだ」といった根拠のない学歴を加えず、わかっている職歴と執筆活動を中心にたどります。
窪の作品には、子ども時代から大人になるまでの心の動きが何度も登場します。ただし、作品の家族関係がそのまま作者の経歴を示すと考えるのは適切ではありません。フィクションとしての構成を尊重して読みましょう。
学歴を無理に埋めるより、広告制作会社などの現場で働き、編集ライターとして人々の暮らしを取材した経歴に注目すると、作家の歩みを具体的に理解できます。
複数の出版社の略歴が一致しているのは、1965年の出生、広告関係の仕事、フリーの編集ライター、2009年の受賞、そして2010年代以降の文学賞という流れです。
広告制作会社とフリー編集ライター|人の人生を取材した時期
作家になる前は広告制作会社などに勤務し、後にフリーの編集ライターとして活動しました。雑誌や仕事の現場で人と会い、話を聞き、限られた紙幅に文章をまとめる経験を重ねました。
編集ライターの仕事では、自分の視点だけでなく、取材相手が何を経験し、どんな言葉でそれを語ったのかに耳を傾けます。窪作品にさまざまな年齢や職業の人物が登場する背景を考える材料になります。
ただし特定の作品の登場人物を、かつての取材相手だと決めつけることはできません。現実の経験は創作の引き出しになっても、小説の人物は複数の要素を組み合わせて作られることがあります。
女性の生き方、家族の役割、働くことと自分の希望のずれなどが繰り返し現れるのは、社会で生活する人の声に目を向ける姿勢が続いているからとも読めます。
創作では、取材で確認できる事実と、資料に残らない感情を想像する働きが必要です。後の『トリニティ』でも時代の背景と三人の女性の人生を結びつけています。
2009年「ミクマリ」|40代で文学への第一歩
2009年、短編「ミクマリ」が第8回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞しました。40代に入ってからの文学賞受賞で、作家としての新しい一歩になりました。
「ミクマリ」は後に刊行される『ふがいない僕は空を見た』に収録されます。性的な関係を題材としつつ、そこから見える孤独、身体、望まれる役割といった問題へ視線を向けた作品です。
この賞は名前だけを見ると特定の刺激を競うものに感じられるかもしれません。しかし受賞作を読む際には、欲望や関係性を通して人が何を求めているのかという側面が重要になります。
出版・ライターの仕事を経た後に文学賞を得たことは、若いころから小説一本で活動してきた作家とは異なる歩みです。経験を積んでから創作へ進む可能性を考えるきっかけにもなります。
2009年の短編受賞と、翌2010年の単行本デビューは別の出来事です。作品の初出と書籍刊行、文学賞を区別すると経歴を整理しやすくなります。
2010〜2011年『ふがいない僕は空を見た』|連作で描く身体と家族
2010年刊行の『ふがいない僕は空を見た』は、「ミクマリ」を含む5篇からなる連作小説です。高校生、主婦、母親など立場の異なる人々が、身体や性、家庭の事情によって複雑に関わります。
ある人物の言動が別の篇でどう見えるかを考えると、最初の印象が変わってきます。一人の目線では十分にわからない事情が、複数の人物の声を通して立ち上がる構成です。
2011年、第24回山本周五郎賞を受賞。同年の本屋大賞では第2位となり、作品の存在が広く知られるようになりました。2012年には映画化されています。
性的描写や不妊、家族の困難を含むため、穏やかな物語だけを読みたい人は内容を確認して選ぶとよいでしょう。人が互いを傷つけながら、それでもつながろうとする姿を描く作品です。
現在読める新潮文庫版は2012年刊、ISBN9784101391410。小説の世界をひと通り味わってから受賞インタビューを読むと、作者が描き続ける主題の始まりが見えてきます。
2012年『晴天の迷いクジラ』|追い詰められた人々の旅
第二作『晴天の迷いクジラ』では、仕事の過重な負担や生活の行き詰まり、家庭の傷を抱える三人が、海へ迷い込んだクジラを見に向かいます。ほかの人には見えにくい心の限界が物語の出発点です。
デザイン会社の社員・由人、経営者・野乃花、女子高生・正子は、生きてきた環境も背負ったものも違います。互いの事情を知る前に同じ道を進むという状況が、新しい見方を生みます。
2012年、第3回山田風太郎賞を受賞しました。命を絶つことが頭をよぎる人物たちが登場するため、精神的につらい時期には読書の負担を感じる場合があります。
この物語の希望は、急にすべての問題が解決することではありません。遠くの海で一つの生き物を見ることが、他人の存在と明日の時間を考える小さなきっかけになります。
新潮文庫版は2014年刊、ISBN9784101391427。前作と続けて読むと、異なる環境の人物をつなぐ連作と長編、それぞれの構成の違いがよくわかります。
2013〜2015年『アニバーサリー』『よるのふくらみ』|人生の節目
2013年の『アニバーサリー』は、世代を隔てた女性たちの人生と、妊娠・出産・育児をめぐる価値観の違いを描く長編です。時代が変われば当然とされる働き方や家族の形も変化します。
子どもを育てることへの周囲の期待と、本人が望んでいる生き方が一致しないとき、何が起こるのかを考えさせます。出産に関わる立場を一つの理想へまとめないところが大切です。
2014年の『よるのふくらみ』では、幼なじみの男女三人の複雑な関係を描きます。好きだという気持ちだけでうまくいかない恋愛の中で、言えない本音が人物を動かします。
2015年には社会的に大きな衝撃を残した少年犯罪を背景に、『さよなら、ニルヴァーナ』を刊行しました。題材と関わりのある現実の事件と、小説の登場人物を混同しないよう注意したい一冊です。
両作品の主題を並べると、女性の身体、家族の期待、周囲から与えられる役割といった関心が続いていることがわかります。恋愛小説として読んでも、社会と個人の問題が浮かびます。
2018年『じっと手を見る』|働くことと恋愛の距離
『じっと手を見る』は地方都市で介護の仕事をする人々を描いた小説です。親密な関係を望む気持ちと、働く現場の疲れ、暮らしの現実が同じ物語の中で絡み合います。
介護や家族の責任は、人が自由に使える時間や恋愛の選び方にも影響します。働く時間や心身の疲れまで含め、その人の生活全体を形づくる要素として描いているのが特徴です。
目の前の仕事で誰かの身体を支えることと、自分自身の身体をいたわること。似ているようで異なる課題が、人間関係に静かな緊張を生みます。
この時期の作品を読むと、窪が個人の感情だけでなく、職業や地域、経済的な条件まで含めて人物を描こうとしていることがわかります。
『ふがいない僕は空を見た』の連作、『晴天の迷いクジラ』の旅と比べ、身近な仕事と恋愛の中で人の選択を追うところに違った読み応えがあります。
2019年『トリニティ』|昭和から平成を生きる女性たち
『トリニティ』は1960年代の出版社で出会った三人の女性、ライターの登紀子、イラストレーターの妙子、編集雑務を担う鈴子を軸にした長編です。仕事、結婚、子ども、自立への希望が時代の変化とともに動きます。
誰もが同じ人生を選べたわけではありません。社会の仕組みや家庭への期待が、望みを実現する方法を制限することもありました。個人の努力だけでは埋まらない差を描くところに重みがあります。
2019年、第36回織田作之助賞を受賞しました。作者が編集・ライターの仕事を経験したことと重ねつつ読むと、働く女性への観察がどのように物語へ生かされたのかを考えられます。
実在の人物や雑誌から着想を得ていますが、新潮社の掲載資料にもある通り、作品はフィクションです。モデル探しの答え合わせではなく、三人それぞれの選択に目を向けましょう。
2021年刊の新潮文庫版はISBN9784101391465、576ページ。ゆっくり読み進めながら、昭和から平成に変わっていく価値観を追いたい人におすすめです。
2019年『いるいないみらい』|子どもを持つ・持たないという選択
『いるいないみらい』は、子どもが欲しい人、迷う人、持たない人生を歩む人など、さまざまな立場を扱う短編集です。正解を一つに決められない選択が、身近な家庭の会話から浮かび上がります。
子どもがいるかどうかで生活や価値観をひとまとめにすると、本人の希望を見落とすことがあります。この作品では、夫婦の間で考えがずれる瞬間や、他者の一言に揺れる気持ちを描きます。
2019年にKADOKAWAから単行本が出され、角川文庫は2022年刊、ISBN9784041124444です。五つの短編が収録され、一話ずつ異なる人生の条件に触れられます。
長編はまだ負担に感じる人や、家族の形を静かに考えたい人への入口として向いています。読み手自身の選択と異なる人物の考えも尊重して味わいたい本です。
『トリニティ』を読み終えた後なら、昭和の女性の選択と、現代の家庭で起きる悩みを比較できます。時代によって変わることと、なお残る課題の違いが見えてきます。
2022年『夜に星を放つ』|別れを描く5つの物語
2022年7月、『夜に星を放つ』で第167回直木三十五賞を受賞しました。2022年5月に単行本が刊行され、喪失を抱える人々が再び誰かとつながろうとする五つの短編を収録しています。
「真夜中のアボカド」などには、新型コロナウイルス流行下の日常や、離れてしまった人への思いが描かれます。時代を示す具体的な暮らしが、登場人物の孤独の形にも影響します。
直木賞受賞時の会見で作者は、重い題材と並行して書いていた時期に、この本が読む人の息抜きになればと考えたと語っています。苦しみを扱いながら、読後の光を残す工夫が見られます。
短編は長編より労力が少ないわけではなく、短い字数で人物を描く難しさがあるとも説明しました。語り口の異なる五篇を読むと、その構成の細かさが伝わります。
2025年の文春文庫版はISBN9784167923280。240ページなので、直木賞受賞作を短い時間で試したい人にも向いています。
2023〜2025年『夏日狂想』『給水塔から見た虹は』|新しい時代の若者
『夏日狂想』では、大正から昭和初期にかけて文壇で活動した女性たちの人生を描きます。仕事と家庭、創作と生活の間の緊張を追う点で、『トリニティ』に通じるものがあります。
『夜空に浮かぶ欠けた月たち』や『ルミネッセンス』など、心の傷と回復、個人の孤立を題材にした作品も続きました。どの本もすぐに結論が出る物語ばかりではありません。
2025年の『給水塔から見た虹は』は、多様な背景の人々が暮らす団地を舞台に、中学生の少年少女がひと夏を過ごす物語です。互いの違いと友人関係に注目した作品になっています。
集英社の刊行記念対談では、作者が愛読してきた藤野千夜と、団地を描くことの面白さについて語りました。場所の具体性から、そこに暮らす人の孤独や希望を描く方法が見えてきます。
大人の恋愛や妊娠だけに限定されない創作の幅を知るには、若い人物が中心となる近作へ進むのも良い方法です。重く感じる主題と、読みやすい文体が共存しています。
2026年『君の不在の夜を歩く』|喪失と再生を再び描く
2026年3月25日、新潮社から長編『君の不在の夜を歩く』が刊行されました。高校時代の同級生五人のうち、一人が亡くなったことから、残された人々の生活が動き始めます。
登場するのは宗教二世、主婦、会社員、小説家など、それぞれに別の事情を抱える大人たちです。昔から知っている人でも、現在の悩みをすべて共有しているわけではありません。
自分が相手をもっと理解できたのではないかという悔いと、それでも日々の暮らしを続ける必要があるという現実。二つの思いの間を行き来するところに、窪らしい人間観察があります。
新潮社の書誌によると単行本ISBNは9784103259275です。2026年10月時点では既刊の作品として紹介でき、文学賞受賞作と併せて新しい作風の変化を読むことができます。
自死や喪失を扱うため、つらい時期には読書の負担となることもあります。身近な人の不在と、その後も生きる時間について考えたい読者に向けた作品です。
窪美澄の主な作品と作風・特徴
窪美澄の主要作品を比べる
気になる作品を、刊行時期・ジャンル・作品の位置づけから見比べられます。
一人の視点だけで人を決めつけない
『ふがいない僕は空を見た』では、ある人物の言葉や行動が別の篇で違って見えてきます。『トリニティ』も三人の女性それぞれが異なる希望と事情を抱え、一つの理想像に収まりません。
作者は直木賞候補時のインタビューで、人には善と悪の両面があるため、単純に人物を裁くことを避けたいと説明しています。人物の行動に共感できない場合にも、別の事情を考える余白があります。
身体・性・妊娠をめぐる声を可視化する
女性の身体や妊娠を扱う作品では、周囲から当然だと思われる価値観が、本人の望みとぶつかります。『いるいないみらい』で人によって異なる選択を並べるのは、その違いを見えやすくするためとも読めます。
性を扱う場面は刺激のためだけの装飾ではありません。関係を持つことで親しくなることも、かえって孤独になることもある複雑さを、人物の身体感覚から描きます。
孤独と喪失を描き、その後の暮らしも追う
『夜に星を放つ』や『君の不在の夜を歩く』では、大切な人を失ったとき、周囲の時間だけが進んでいく感覚が重要になります。気持ちの整理を急がず、日常の小さな出来事を重ねます。
別れの悲しさが完全になくなる結末を期待するより、残された人が誰と話し、どのように今日を過ごすかに注目すると、読後の余韻を受け取りやすくなります。
個人の人生と社会の時代背景を結びつける
『トリニティ』の働く女性、『給水塔から見た虹は』の団地の若者など、時代と場所が違えば生きる選択肢も変わります。歴史や地域を背景に置くことで、個人だけでは解決できない困難を具体化します。
制度の仕組みを背景に置き、その中で暮らす人が何を考え、何を望むかを追います。読み手が自分とは違う経験を想像する助けにもなります。
窪美澄と藤野千夜・文芸誌|作家としてのつながり
2025年の『給水塔から見た虹は』刊行時には、窪が愛読してきた作家・藤野千夜との対談が集英社で公開されました。二人は団地に暮らす人々や、町の変化を物語にする面白さについて語っています。
文芸誌『オール讀物』では『夜に星を放つ』の短編が掲載され、受賞前後のインタビューで作者自身の創作観が記録されました。作品が書籍になるまでの場として、雑誌の役割も見逃せません。
窪が若いころに関わった具体的な編集者や、私生活での友人関係などは、本人が公表していないものまで断定しません。創作上の影響と私的な交友は区別する必要があります。
作家同士の関係は、共同で本を書いたかだけでは測れません。互いの作品を読み、同じ場所や主題について語り合うことも、文学の見方を広げる交流です。
窪美澄の代表作・おすすめ作品6選
『ふがいない僕は空を見た』|身体と家族を描く原点
作家の原点を知りたい人には『ふがいない僕は空を見た』。高校生、主婦、家族の世話をする人など、複数の登場人物の視線を重ねて、隠れた痛みと希望を描く連作です。
最初に知った人物の事情が、別の短編を読むことで違う意味を持つところが魅力です。身体や性にまつわる描写があるため、穏やかな短編だけを求める人には少し重い可能性もあります。
2010年単行本刊行、2011年山本周五郎賞。新潮文庫2012年版はISBN9784101391410、320ページ。
山本周五郎賞受賞作としての意義と、連作で人間関係を描く技巧を一度に味わえる一冊です。
『晴天の迷いクジラ』|生きづらさと遠い海
仕事や家庭の事情に追い詰められた三人が、迷い込んだクジラを見に海へ向かう長編。出会った時点では理解できない相手の事情が、旅を続けるうちに見えてきます。
誰にも話せずにいたことを言葉にできるかが大きな問いです。自死を考える人物も登場するため、心が疲れているときは読む時期を選びましょう。
2012年山田風太郎賞受賞。2014年刊の新潮文庫版はISBN9784101391427、432ページ。
つらい状況にいる人物を丁寧に追う長編を読みたい人に向いています。
『トリニティ』|三人の女性の昭和・平成史
1960年代の出版社で知り合った女性たちが、ライター、イラストレーター、主婦と別々の人生を進みます。仕事、結婚、子ども、自分の夢が同時にかなうとは限らない時代の物語です。
人の選択が何によって左右されたかを考えると、昭和の女性史と現在の働き方とのつながりも見えてきます。三人の立場を比較しながらじっくり読むのがおすすめです。
2019年第36回織田作之助賞受賞。2021年新潮文庫版はISBN9784101391465、576ページ。
働く女性の歴史や長い時間を描く群像劇を楽しみたい人に選んでほしい作品です。
『いるいないみらい』|家族の形を考える短編集
子どもを持つことに迷う夫婦、不妊の不安、周囲の期待など、家庭の中の選択を扱う短編集です。誰にとっても同じ生き方が幸福だとは限らないことを、短い物語から考えられます。
人生について答えを押しつけない読み心地が特徴。自分と考え方の違う人物が登場しても、その人の事情を理解しようとすることで物語の幅が広がります。
2019年単行本刊行、2022年角川文庫版ISBN9784041124444、224ページ。
短い文章で家族やこれからの生き方を考えたい人に向きます。
『夜に星を放つ』|直木賞受賞の5篇
初めて読む一冊として最も選びやすいのは『夜に星を放つ』です。大切な人との別れを抱える登場人物が、新たな関係に向かう五篇の短編集。
悲しみを否定せず、今日を過ごす中にある光を描きます。コロナ禍の人間関係や婚活アプリなど、執筆時代の暮らしが自然に物語に取り込まれています。
2022年第167回直木賞受賞。文春文庫2025年版はISBN9784167923280、240ページ。
直木賞を入口に、窪美澄の人物の描き方や余韻の残し方を知るのに適した一冊です。
『君の不在の夜を歩く』|2026年の喪失と再出発
高校時代の同級生の死をきっかけに、残された仲間たちの暮らしが動き始める長編です。若いころのつながりと、大人になってから抱える孤独や葛藤との隔たりを描きます。
宗教二世、家庭や仕事、創作の事情など、人物ごとの問題が一つの出来事から浮かび上がります。テーマは重く、心の負担を感じる人は内容を確認して選ぶと安心です。
2026年3月25日刊、新潮社単行本ISBN9784103259275。直木賞後の現在の創作を知りたい人に向けた作品です。
『夜に星を放つ』で喪失を描く短編に触れてから進むと、長編で人物と時間を追う方法の違いも楽しめます。
窪美澄のおすすめ作品と読む順番
好みを選ぶと、この記事に登録された作品から「1冊目 → 2冊目 → 3冊目」の読む順番を提案します。
迷ったら『夜に星を放つ』→『いるいないみらい』→『ふがいない僕は空を見た』。読みやすい短編から入り、家族の選択、連作の複雑な人間関係へと進める順番です。
直木賞から作風を広げるルート
『夜に星を放つ』→『ふがいない僕は空を見た』→『晴天の迷いクジラ』。最初に喪失と回復を描く短編へ触れ、初期の連作と長編で感情の重さを体験する順番です。
家族と女性の生き方を考えるルート
『いるいないみらい』→『トリニティ』→『ふがいない僕は空を見た』。現代の子どもをめぐる選択から、昭和の働く女性の人生を経て、家族と身体を描く連作へ進みます。
長編で深く向き合うルート
『トリニティ』→『晴天の迷いクジラ』→『君の不在の夜を歩く』。歴史の中の群像、旅を通じた出会い、友人を失った後の人生という異なる長編を味わえます。
窪美澄の受賞歴|R-18文学賞から直木賞まで
2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞。2011年『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞、2012年『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞を受賞しました。
2019年には『トリニティ』で第36回織田作之助賞を受賞。2022年『夜に星を放つ』で第167回直木三十五賞を受賞しました。五つの受賞作を並べると、短編、長編、女性史など作品の広がりが見えます。
2011年本屋大賞第2位は受賞と混同しないようにしたい記録です。出版年・候補・受賞年を分けて見ると、デビューから直木賞までの歩みが正確に理解できます。
短い期間に複数の文学賞を受けながら、その後も作品の形式を固定していません。受賞歴は到達点というより、異なる作品への挑戦が続いた節目として捉えられます。
窪美澄の執筆方法|短編の難しさと人物の多面性
2022年の直木賞受賞インタビューでは、短編は短いから楽ということはなく、限られた原稿枚数で人物を描くのは長編以上に難しいと感じるようになったと話しています。
また、人には善と悪の両方があるので、作品内で善悪を簡単に決めたくないとも説明しています。『夜に星を放つ』の人物がときに矛盾して見える理由を考える手がかりです。
長編の場合は、異なる人生を歩んできた人物を一つの場所や時代につなぎ、時間の経過を通して関係を変化させます。『トリニティ』と最新作を比べると、群像の構成が違うことがわかります。
作業時刻や執筆部屋など公表されていない私生活の習慣を推測して加えることはしません。確認できるのは取材・創作について本人が語った考えと、完成した作品から読み取れる手法です。
窪美澄の現在・近況|2025年・2026年の刊行作品
2025年には集英社から『給水塔から見た虹は』が刊行され、団地で暮らす中学生とその周囲の人々を描きました。若い世代へ視点を移した作品は、従来の家庭小説との読み比べにも向いています。
2026年3月25日には『君の不在の夜を歩く』を新潮社から刊行。かつての同級生が抱える悩みと死別の影響を描き、喪失と再生をめぐる主題が続いています。
出版社公式書誌で確認できた2026年の刊行物を扱っています。新刊情報は今後追加される可能性があるため、最新の発売日や版については出版社の著者一覧も参照してください。
初期作品を読む人は2010年の単行本と現行文庫の刊行年を分けて考え、最新作を試したい人は2026年の単行本を選ぶと、年代の違う物語を整理しやすくなります。
窪美澄についてよくある質問
窪美澄の出身地と学歴は?
1965年東京都生まれ。出身校や最終学歴については確認した出版社の公式略歴で明記されていません。
デビューしたのはいつですか?
2009年、「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。2010年に受賞作を収めた『ふがいない僕は空を見た』が刊行されました。
直木賞を受賞した作品は?
2022年、第167回直木賞を『夜に星を放つ』で受賞しました。5篇の短編集です。
初めて読むならどの本?
読みやすい短編なら『夜に星を放つ』、家族の選択なら『いるいないみらい』、作家の原点を知るなら『ふがいない僕は空を見た』がおすすめです。
トリニティはどんな作品?
1960年代の出版社で出会った三人の女性の仕事・結婚・人生の選択を描く長編です。2019年織田作之助賞を受賞しました。
2026年の新刊は何ですか?
新潮社から2026年3月25日刊行の『君の不在の夜を歩く』です。同級生の死をきっかけに残された人々の人生を描く長編です。
まとめ|窪美澄は人の痛みと希望をさまざまな形で描く作家
窪美澄は広告制作会社や編集ライターの経験を経て2009年に文学賞でデビューし、2011年の山本周五郎賞、2022年の直木賞などを受賞しました。家族、身体、喪失、働くことなどの問題を、一人ひとりの立場から描く作家です。
最初の一冊には『夜に星を放つ』、家族の選択を考えるなら『いるいないみらい』、長編を読むなら『トリニティ』。さらに『ふがいない僕は空を見た』『晴天の迷いクジラ』へ進むと、作品の奥行きを味わえます。

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